イントラネットとインターネットの間には一般に強固なファイアウォールが設置されており,通信が大幅に制限されています.これは企業ネットワークのセキュリティを確保するための措置であり,ある程度の利便性が損なわれることはやむを得ないことです.ファイアウォールを通過できる通信プロトコルは,その組織のセキュリティポリシーで定められることが多く,一般には組織内部から外部サーバへのWEBアクセス,およびメール送受信だけを可能にします.企業のセキュリティポリシーは通信における憲法のようなものであり,一度定めたら変更することはなかなか困難です.
ここで,セキュリティポリシーを変えないまま,特定のアプリケーションだけが安全にファイアウォールを越えられるようにできれば大きなメリットがあります.例えば,IP電話は今後携帯電話に変わるものとして普及が期待されています.IP電話は何より通信費用がかからないという利点があります.アクセスポイントが整備されて無線LANエリアが広がれば,IP電話が携帯電話に代替されていくことが予想されます.IP電話通信が安全にファイアウォールを通過できれば,業務連絡もIP電話で実現できるようになり,大きなメリットが得られると考えられます(図1).
そこでファイアウォールを安全に通過できるIP電話システムを提案します.IP電話としては標準的なもの,すなわち,ダイヤリングにはSIP(Session Initiation Protocol),音声通信にはUDPによるVoIPが用いられるものを想定します.